2022/03/08

レビュー Miele(ミーレ)の洗濯乾燥機 WT1

洗濯機がうるさい。人に聞けば、スペインでは洗濯機はだいたいとてもうるさい物である、とのことだが、いや、うちのは限度を超えている。

うちの洗濯機は、スペインのアパートによくある、一階から屋上まで続く各階中心の吹き抜けエリアに設置してあるのだが、マンションの中に足を踏み入れただけで、既にそこはかとなくいつもの不快な脱水音が聞こえてくる。階段で上がるとよくわかるのだが、±3フロアにわたりうちの洗濯機の音が響き渡る。

Samsungのドラム式洗濯乾燥機を購入した当初は気にならなかったのだが、1年くらいしてから、脱水時の騒音、ドアからの水の滴り、乾燥が永遠に終わらない、などの問題を抱えるようになる。その後4年ほどそのまま使用していたのだが、騒音については耐え難く、近隣住民から怒鳴り込まれやしないかと戦々恐々していたこともあり(スペイン人のおおらかさのおかげか幸いにして文句をいわれることはなかったが)、ついに買い替えることにした。

ある程度省エネで、音が静かになって、今よりも早く乾燥すれば、細かい機能はどうせ使わないのであまり気にしない。各社各機種比較してみたが(ちなみに日本のメーカーの洗濯機は売っていない)、騒音の数値は五十歩百歩であり、大してかわらない。そもそも洗濯物の内容や重量、機器の摩耗などにもよるので、あまり当てにならないと思っている。あまり当てにならない数値の情報をもとに選ぶのは難しく、評判などを検討しなければならなくなったのだが、もう面倒になる。そして、「あの高くて有名なMieleの洗濯機がうるさいなら、もうどこの洗濯機を買ってもきっとダメだろう」という動機でMieleの乾燥洗濯機にたどり着く。

Mieleの製品を買ったことはなかったが、とにかく高価なプレミアムブランド家電というイメージがある。日本で購入する場合、Mieleの洗濯乾燥機はおおよそ50~60万円程度である。何がそんなにいいのかわからないが、とにかく高い。しかも設置条件もいろいろと面倒そうである。要200V電源、洗濯機のサイズ、洗濯機が重いため床の耐荷重も要注意。よほどMieleの製品を知っていて好きでない限りはまず買えない。

しかしこちらで購入する場合には、特に問題はない。200Vは標準、洗濯機のサイズも標準(ありがたいことに、洗濯機の標準規格サイズでもあるのかどこの洗濯機を買っても同じサイズ)、洗濯機用防水パンなどはなく、丈夫そうなタイルに直置きで多分大丈夫。いや、でも高い。

スペインでは、家電、コンピューター関連機器が、日本と比較して割高な上、種類が少なかったり、機能がシンプルなものが多い。車に関しても、特にヨーロッパ車を日本で買うよりも安いわけではないようだ。だが、製品によりけりだとは思うが、一部の製品やブランドは日本よりも安く楽しむことができる。洗濯機に関してはMieleだ。

Mieleの洗濯機を調べてみると、洗剤自動投与もついているし、洗濯機の定期的な清掃もほとんど必要ないようであるし、長寿命をアピールしているので(日本国外に住んでいても衛生観念はそんなに変わるものでもないので、毎日一回以上洗濯機を使う習慣は変えられない)、いろいろと煩わしいことから解放されそうである。唯一の問題は価格であるが、日本で買う価格のおおよそ半額であることに気が付く。日本で、日本製の最上位機種を購入するくらいの金額と気持ちである。いや、でもやっぱり高い。しかし何といっても、日本ではなおさら高いプレミアムブランド、Mieleである。高いは高いが、日本で買うよりも大分安い。洗剤の自動投与も楽そうだしなんだかお得な気がしてくる。

以下、Mieleの洗濯乾燥機 WT1 WTW870 WPM 9/6 kgをスペインで使用してみてのレビュー。すべての面で大変満足。洗濯が楽になって楽しくなった。


脱水が静か

脱水時の騒音は断然静かになった。洗濯機なので音はするが、万一夜中まで洗濯機が動いていたとしても、もはや苦情におびえる感じでは全くない。


乾燥時間が短い

ヒートポンプ式のおかげか、1時間から2時間半で乾燥が終わるようになった。前は4時間かけても乾かなかったのに。。。


洗濯機部分の糸くずフィルターの定期的な清掃が不要

前に使っていたSamsungのドラム式洗濯乾燥機も、糸くずフィルターはあまり汚れずほとんど清掃しなくてよかったので楽だったのだが、この機種ではそもそも定期的な清掃となっておらず、トラブル時の処置としてしか記載がない。ちなみに5年くらい前に日本で使用していた日立のドラム式洗濯乾燥機は、一週間に一回は清掃しないとフィルターが詰まってしまうくらいであった。なお、3か月ほど本洗濯乾燥機を使用(平均1日一回以上使用)した後、排水フィルターを取り外して確認してみたところ、ほとんど汚れは付着していなかった。


乾燥機部分の集塵フィルターの定期的な清掃が不要

集塵フィルターがない。いったいどうなっているんだろうか。ホコリによる乾燥機能の劣化が心配であるが、Mieleの10年保証の範疇であることを期待しつつ、しばらく様子見。前のSamsungの洗濯乾燥機にもなかったのだが、乾燥機能は1年程度で使い物にならないくらいに劣化。洗濯機を分解して内部を清掃しても、性能はあまり回復しなかった。さらに前に日本で使用していた日立の乾燥洗濯機は、乾燥毎にホコリでびっしりになるフィルターを日々清掃していたが、数年もすると同様の結末に。ちなみに、本洗濯乾燥機を使用して3か月程度たった頃、洗濯後に毎回「糸くず取り」を実施するよう表示が出るようになったが、とても簡単な処置で済んだ。


洗濯後に「糸くず取り」の表示が出るようになった。
もしや手間のかかる清掃が必要なのかと思っていたら、洗濯物を取り出して「糸くず取り」選択、9分待つだけで自動的に終了。さすがMiele。期待通りメンテナンスが楽である。

洗剤の自動投与部分の定期的な清掃について

長期間使用しない場合や、洗剤の種類を変更する場合を除き、特に定期的な清掃は規定されていないのだが、実際に使っていると洗剤カートリッジ挿入部のバルブから洗剤が少しずつ漏れ出てくるので気になる。

カートリッジ挿入部。市販の洗濯を1.4L程度(カートリッジ1本分相当)した後の状態。Miele純正の洗剤UltraPhaseを使用した場合でも同様の状態となる。この部分が汚れても機能に問題は生じないだろうが、カートリッジの底面も汚れるので、カートリッジ交換の際に手や机を汚して始末が悪い。たまに床にはいつくばって雑巾で清掃するが、何せ洗剤なのでなかなか取り切れない。清掃時にはバルブに触れて破損させないように十分注意したい。

洗剤の自動投与が思ったよりも便利すぎる

MieleではTwinDos systemといわれる洗剤の自動投与。すでにかなり洗練されている。洗剤は2種類同時にセットが可能(一般的には洗剤と柔軟剤の組み合わせになるだろう)。投与量は、洗剤の銘柄や水の硬度で規定値を指定する。また、洗濯時に投与量を都度加減することも可能。自動投与機構の定期的な清掃は必要ない。長期間使用しない場合や洗剤の銘柄を変えるときのみのようである。使用してみてわかったが、毎回計量する手間も、洗剤がこぼれたり、計量カップ内で固まったり、汚れたり、柔軟剤の場所に洗剤を間違えて入れてしまったり(後始末が大変。。。)、都度気を使ったりなどのわずらわしさがなくなり、洗濯が楽になったように感じる。手動で洗剤と柔軟剤を入れるのにかかる時間は、毎回1分程度の作業だと思い自動投与の便利さを侮っていたが、大変満足している。洗濯の作業が、衣服の出し入れだけで完結するようになる。実際に体感するまで、この快適さを想像することができなかった。


タッチスクリーンが快適

スワイプも可能なカラータッチスクリーンを搭載。初めて使う場合でも、操作が直観的でとてもわかりやすい。電源ボタンもタッチ式。物理的なダイヤルや出っ張りがないので、洗濯機の前面が汚れても簡単に拭けるので便利。洗濯設定のカスタマイズやお気に入りも名前を付けて登録可能。洗濯機のWifiの初期設定も、スマホアプリと洗濯機のタッチスクリーンの両方の画面に従うだけで、驚くほどに簡単。さらに日本語の表示設定も選択可能で、翻訳品質も悪くない。

予想外にも日本語が選択可能。

洗濯機のドアをあけると明るくなる

ドアを開けると洗濯層内のイルミネーションが点灯! 夜中、洗濯場の電気をつけなくても洗濯物が取り出せ、地味に便利。また、なぜか扉が開く方向がSamsungとは逆(右開き)で、たまたまではあるが、うちでは洗濯機が使いやすくなった。

洗濯層内が明るいと乾燥前に必要なものだけ取り出す場合にとても便利。

アプリ Miele@homeも意外と便利

洗濯機以外のMiele製品にも対応するアプリ。特に何も期待していなかったのだが、洗濯残り時間や洗濯終了のお知らせが意外と便利。Miele純正洗剤を使用すれば、洗剤の残量レベルも表示可能に。


やわらかい仕上がり

乾燥機をかけずとも、タオルがある程度ふわふわに。前のドラム式洗濯機では、乾燥をかけないと繊維が寝てしまい、タオルが自然乾燥後に棒のように固くなっていた。


長寿命

20年間の使用を想定した寿命試験を行っているようなので、長寿命を期待。+4万円程度で10年保証に加入可能。毎日使うものなので、頻繁に壊れたり買い替えたりと煩わしいことはできるだけ避けたいし、10年以上予想外の追加費用なしでこの便利な使い勝手を楽しめるのであれば、この耐久性はとても魅力的だ。


終了タイマーでセットした時刻に終わらない場合がある

洗濯時間はデフォルトで2時間半だが、洗濯物の投与量に応じて、洗濯中に所要時間が短くなったり(1時間半)、長くなったりする(3時間半)。終了タイマーをかけても、洗濯物の量が多いと、終了予定時刻に洗濯が終わらない。とはいえ、騒音も小さく、その後の乾燥時間も短くなったので、挙動がある程度わかってからは特に問題となっていない。この、変化する洗濯時間と終了タイマーをどうコントロールするかの設計思想は、洗濯機の種類やメーカーで異なるようだ。前に使っていたSamsonの洗濯乾燥機では、終了タイマーをセットした時点で(水は入れない状態で)洗濯物の計量動作が行われ、洗濯時間が算出、固定され、終了時刻に必ず終わるようになっていた。Mieleの洗濯機では、終了タイマーの厳守よりも、期待通りに洗濯物が仕上がることを重視しているようだ。


お気に入りの設定に開始タイマーが保存されない

夜間電気料金の時間帯に乾燥機を使用したい場合や、早朝の洗濯時に開始タイマーをセットするのだが、お気に入りの設定としては登録ができない。同じ時間と同じ洗濯・乾燥設定を繰り返し使うので、開始タイマーまでお気に入りに保存されるとさらに便利なのだが。


洗剤の残量表示(TwinDos使用時)

Miele純正の洗剤UltraPhase 1とUltraPhase 2を使用しているときのみ(タッチスクリーンでUltraPhaseを指定する)、洗剤の残量がアプリで表示されるようになる。ちなみに、洗濯機本体のタッチスクリーンからは残量は確認できない。アプリからのみ確認可能である。

便利な機能ではあるが、市販の洗剤をTwinDosで使用している場合には、この残量表示機能は無効になり使用できなくなる。

洗剤がなくなるとき(TwinDos使用時)

洗剤の残量が少なくなると、洗濯完了後、以下のメッセージが表示される。

この後まだ1~2回は問題なく洗濯は可能であるが、この時点で洗剤をTwinDos Refill containerにリフィルした方が無難。ちなみに、数か月使用してから気が付いたのだが、どういうわけかこのメッセージも表示されずいきなり洗剤切れになるパターンもしばしば見られた。最も安全な運用方法は、表示とは関係なく、月に一回などルーチンワークとして事前にリフィルすることだと理解した。
この後、確か2回程度洗濯(計100ml程度使用)は可能で、3回目の洗濯完了後に、以下のメッセージが表示されて洗剤切れに。
表示通り洗濯物の仕上がりを確認すると、柔軟剤のにおいがほとんどしない。おそらく、最後の洗濯では柔軟剤が足りず、指定の容量以下が投与された模様。洗濯前に警告がでるのではなく、洗濯完了後に残量なしの表示がでるため、ぎりぎりまで使用しようとすると、最後の洗濯が期待通りの結果にならない可能性がある。柔軟剤ではなく洗剤でこの事態が発生すると、運が悪いとほぼ水だけで洗い、柔軟剤で仕上げるということになる。その洋服を着ると生臭いので気が付く。。。やはり実際の運用としては、警告を待たずして、事前にリフィルする必要があると思う。

Miele純正の洗剤UltraPhase

洗濯機を購入した際に何個か付属してきたので、数か月間使用する機会があった。独特であるが上品で清潔感のある香りがわずかに洗濯物から香る。プリンターのインクカートリッジのように交換して廃棄するだけなので、洗剤をタンクにリフィルする手間がなく楽。汚れもよく落ちる印象であるが、いくつか気になる点がある。


UltraPhase使用時 - カートリッジを交換するタイミングがいまいちわからない

カートリッジ内の洗剤が完全になくなるまで使用したいが、ぎりぎりまで攻めすぎると、洗濯後に例の「空です」表示がでて、最後の洗濯で十分な洗剤が投入されない可能性がある。これを避けるために、洗剤がなくなりそうになったら洗濯開始前に毎回カートリッジを取り外して残量の目視確認もできるのだが、大変面倒。洗剤自動投与の意味が分からなくなる。けち臭く最後まで完全に使い切ろうと思わないで、なくなりそうになったら早々に諦めて交換する事を想定しているのだろうか。それとも、ほとんど洗剤や柔軟剤を使用しないで洗われてしまった可能性のある洗濯物は気にしないことにするのか、また洗い直しをするのだろうか。。。正確な洗剤の残量検出とコントロールはなかなか難しいとは思うが、UltraPhaseを購入して使用する場合には気になるのではないだろうか。


UltraPhase使用時 - 犬の毛布のにおいがなかなか取れない

市販の洗剤を使用した時には、前に使っていた洗濯機よりも劇的ににおいが取れたのだが、Miele純正の洗剤にしてから、それなりににおいが残る。様々なオプションを有効にして(汚れがひどい、インテンシブ、つけおき洗い、ウォータープラス、エクストラリンス)洗濯をして、やっと臭いが取れたかな?という具合だ。ちなみにこれだけオプションを有効にすると、洗剤投与量が猛烈に増えるようで、あっという間に洗剤の残量が減る。


TwinDos systemの洗浄にTwinDos Careは必須?

説明書にはTwinDos Care(洗浄用の液体の入ったカートリッジ)かTwinDos Refill container(市販の洗剤をリフィルする空カートリッジ)が必要との記載が見られ、詳細不明。タッチスクリーンにはTwinDos Care一択のように表示されてたじろくも、Mieleの公式Youtubeの操作説明でも、水を入れたカートリッジとタッチスクリーンに表示されているので、TwinDos Refill containerに水を入れて使えば多分問題ないのかなと。

TwinDos Refill containerに水を入れてやり過ごす。

「洗剤投入量確認」表示の謎

稀に洗濯完了後に「洗剤投入量確認」の表示が表示されるのだが、説明書に記載がない。

洗濯後の「洗剤投入量確認」表示。英語表示での「Check dosage」で検索してみると、Mieleの別機種の洗濯機の説明書に記載があり、洗濯時に泡が立ちすぎると表示がでるようである。
実際に洗濯時の挙動を確認してみると、確かに泡だらけ。いつも通りの洗剤投与量なのだが、洗濯するものによっては極まれにこうなる(レースのカーテン、防水加工の布等)。この結果が予想される場合には、洗剤投与量を減らして洗濯することも簡単にできるが、面倒なので特に気にしない。

TwinDos Refill container 1と2は別売り

TwinDos Refill container(市販の洗剤を入れるためのタンク)は本体とは別売りで、市販の洗剤をTwinDosで使用するためには、別途購入する必要がある。

TwinDos Refill container 1と2の2種類別のものがあるのだが、プラスチックの刻印の番号が違うだけで、ひょっとして物は同じ?

TwinDos Refill containerの容量

1.4L。洗剤の銘柄と水の硬度によって都度の投入量は異なるが、うちの場合3週間程度で洗剤をリフィルする必要がある。


WT1洗濯乾燥機 WTR860 WPMについて

プレミアムモデルという位置づけで2022年4月よりWT1洗濯乾燥機 WTR860 WPMというモデルがミーレ・ジャパン(株)より発売されるが、ウェブを見る限り機能はWTW870と同じようなので、おそらくWT1シリーズの容量が小さいモデルではないかと思われる。